フォッケウルフFw190D−9(ハセガワ1/32)製作記

2003.8.15初出

 

<はじめに>

 近頃、大型キットの発売ラッシュが気になってたところ、日頃の不摂生から10日程入院することとなり、その間の暇つぶしにタイミング良くドーラが発売となる。時間は余る程あるので、○リベットを打つのが今回のポイント。

キット評

 プロポーションは上反角不足を除くと最高。イメージはハセガワ1/72に近い。特にタミヤの欠点である翼形は正しくなっており、高く評価できる。タミヤの主翼と垂直尾翼は、前縁が厚ぼったい上、後半が平板で、およそ高性能機と思えない。修正も胴体フィレットに影響するので大変なのだ。
 同じくタミヤで曲線になってしまった機首パネルのヒンジラインも、正しく直線になった。ついでに言うと、タミヤの風防前面の傾斜は立ちすぎ。もちろんこれもハセガワでは正確。

 主脚収容部から見えるエンジンもGood。おかげで余計な金と手間が省ける。まあ、自分がタミヤヨンパチを作るなら、フタはそのまま残すが。
 細部では、プロペラ形状、機首機銃口付近のパネルの脹らみ具合が異なる。これはスケビで指摘のとおり。また、左右の排気管が上から見て平行でない。左右のシリンダーは平行に並んでいるから、こういうことはあり得ない。ここはタミヤが正しい。

 総合的に見て、全スケールを通じて最良のキット。ヨンパチを苦労して修正するより、こちらを素組みする方が、結果的に簡単かつ正確なモデルが出来上がると思う。

 

<組み立て>

コクピット・エンジン

 胴体内に組み込む部品を、先に組み立て塗装しておく。なにしろ病室で塗料は使えないから。これらは全くのストレート組み。ここまで準備して、いざ入院。


コクピットは塗装仕上げ。

シートベルトのバックルには不要エッチングを使ったので、出来がいまいち。シートの縁と防弾板は薄く削る。

 

リベット

 サンニイともなると、通常の点リベットでは実感に欠ける。そこでオーバー・スケールながら、0.3mm径の○リベットにする。32倍すると約1cmで、実機のリベットはせいぜい5mm位だから、明らかにオーバー・スケール。そこは模型的演出と割り切る。資料はエアロ・ディティールとウォーク・アラウンドをメイン。新版世傑の折込イラストが、かなり正確。

   道具はヨンパチF4U−5Nでも使った0.3mmのシャーペン。先をペーパーで研ぐ。鉛筆で下描きし、両面テープを貼ったプラ板を定規に、できるだけ密に打つべく心懸ける。時間はあるので、例えばダブルの所はダブルにするなど、実機を忠実に再現するよう努める。パーツの状態で打てるものは打ち、接着部付近は残して、接着・整形後に打つ。

 正味1週間×1日5時間で大体完了。打ったリベットの数をざっと計算してみると、1〜2万個。単純に割ると、1個あたり所要時間が約10秒だから、実際には手を動かしているより、資料とにらめっこの方が長い。もちろん、これには下描き、彫刻刀でめくれ取り、ペーパーがけも含まれるが。
 しかし、病室で一心不乱にリベットを打つ姿は、おそらく異様。  


主翼上面のリベット。ダブルの箇所は、千鳥配置にするときれい。

 

胴体・主尾翼 

 晴れて退院。張り切って製作続行。
 さて、組み立てで注意したいのは、機首上面の接着。ヒンジの線がシャープになるように、十分すりあわせる。パーツ割りがまた微妙なので厄介だ。胴体機銃パネルは、取って付けた感を強調するため、エッチングソーで切り離す。一方、主翼機銃パネルは、一体に見えるよう合わせ目をきれいに消す。
 胴体機銃口付近のパネルは、くっきりした折れ線をパテで滑らかにする。排気管は前2本と後ろ4本ずつがそれぞれ平行になるように、取り付け基部を前後に切り離し、再接着する。排気管自体を削るよりは楽。

 主翼は上下につぶれやすいので、補強する。バキューム・パラダイスで紹介されている細切りプラ板の貼り付けと、つっかい棒(タイフーンF4U−5N参照)を併用。つっかい棒は、許容範囲以上の大きな変形を防止するのが目的なので、必ずしも内寸にぴったり合う必要はない。
 キットは上反角不足だが、そのまま組んでしまい、後で修正する憂き目にあう。ここは、主桁パーツを加工して正しい角度にすべきである。


はっきりした折れ線をパテで滑らかにする。

少々分りづらいが前2本と後ろ4本とは幅が異なる。まあ自己満足の世界。

 

脚回り

 主脚柱のモールドなど、素晴らしい出来だ。そのままでも十分なディティールだが、コクピットや脚収容部がストレートなので、こちらに気合を入れる。
 まず、三点姿勢をチェック。私の感覚では仰角が強く腰高感があるので、脚をオレオ部で2mm短縮。ついでにメッキパイプに交換。それに合わせカバー表面の「○」モールドの位置を彫り直す。ただし、ここは付け根で長さ調節するのがベター。

 実機では主脚カバー上端が収容部に潜り込んでいる。カバー上部にプラ板を継ぎ足せばよい訳だが、脚柱をカットしたため都合良く問題クリア。
 カバーの縁を薄く削るのは定番工作だが、ドーラのカバー上部は、縁が「コ」の字断面をしている。ここは一旦「┐」に削ってから0.2mmプラバンを貼って再現。

 ブレーキパイプは、脚柱とカバーをつなぐロッドの内側を通っている。この部分を伸ばしランナーで再現。その上下は糸はんだで、太さを変える。接続部はマスキングテープ細切りを瞬間でとめる。折角なので目立つ色に塗るが、真偽のほどは不明。タイヤに隠れる部分の取り回しもフィクション。ブレーキパイプの取り回しは、初期のA型と後期型では異なる。

 脚カバーとタイヤの間隔は開きすぎ。見えない部分であちこち相当削り、間を詰める。
 尾脚は斜めのロッドに手を入れ、接地面を削る。尾輪でもへたなヨンパチの主輪より大きい。


ブレーキパイプ、カバー留めロッドに凝ってみた。

カバー上部は、縁が「コ」の字断面をしている。タイヤとカバーの間隔はこのぐらい。引き込みアームにもパイピングを施す。

 

その他細部

 プロペラは、スケビのように裏にプラバンを貼って整形。幅を2mmほど広げ、先端を回転方向後方にずらすが、少々幅広すぎか?。また、後縁付け根付近のカーブが修正不足。正しくはラジエータ・カウルをクリアする形状。気付いちゃいるが、直す気力がない。取り付けの際は、ピッチを深くするとよいだろう。モデルはそのまま。
 フラップは上げ状態とする。表面のヒケが著しいが、ヤスリで対応可能。パテの出番なし。ガンカメラの小穴には、真鍮パイプを埋める。折れそうな部品の金属化とライト類のクリアー化は定番工作。


修正前のプロペラ。

修正後。隙間は瞬間+プラの削りカスで埋める。

ガンサイトのフィルターはネガフィルム。接着はクリアーボンドだが、少々不安。

尾脚は斜めのロッドに手を入れる。タイヤとフォークの際を、切り出し刀で掘り込む。

 

キャノピー取り付け

 窓閉め派の私は、塗装前にキャノピーを接着する。実は今回は、サンニイだしクリアパーツも薄いので、窓を開けようかとも思ったのだが、垂れたアンテナ線のいい材料が思いつかず、いつものパターンに。

 そうすると、透明な窓のために儀式が必要。
 塗料の霧が思わぬ所から回り込まないように、あらかじめ胴体組み立て時に、計器板の裏などの隙間をテープで塞いでおく(これが後に思わぬ役目を果たす)。クリアパーツは、ハセガワのコンパウンド&ポリマーで磨き、断面を機体内部色で塗る。前後を先に接着。ゴミを取り除き、エレガードをひと吹き。接着は流し込み系。隙間に溶きパテを充填。モールドをエッチングノコで再生。
 アンテナ線は、キャノピーパーツに穴をあけ、裏側にがっちり接着しておく。

 

<考証> 

基本塗装

 塗装は、キット指定にもあるが、
イーグル・カルス・デカール#14を使い、赤腹のJV44「赤の1番」ハインツ・ザクセンブルク少尉機(Lt.Heinz Sachsenberg)とする。私にとってドーラといえば、これしかない。バイオグラフィーはグリーンアロー出版「ドイツ空軍エース列伝」の他、インターネットでも拾える(@A)。実機写真は、エクスパルテン・デカール(No.72−1)の小冊子に左右両面と正面のものがある。資料Nのvol.2にも同じものが掲載されている。本機の塗装解説は諸説あるが、これらの写真を基に、以下少々くどくなるが、私自身の考証をしてみたい。

 諸説といえば、太古には車輪に羽の生えた部隊マーク付きの塗装図が、堂々と出版物に載っていたものである。まあ、人の描いた図面や塗装図ほど当てにならぬものはない、という証左。ということは、ここで私の書いたものも当てにならない訳だ。
 ちなみに、大昔に作ったエアフィックス1:72は、このマークを付けて完成している。これはこれで、過去の記念物として逆に有難みを感じたりするが。また最近訂正されたが、以前はエクスパルテンでは、この赤の1番の下面を「黒」としていた。実機写真を見ると、確かに黒と思いたくなるほど暗いのだが。


エア1/72のドーラ。同じ機体とは思えないほど考証が違う。これでもキャノピーを絞ったりして、結構遊んでる。

 

 話を戻す。以下、あくまで私の解釈。上面塗装は、RLM82ライト・グリーンと83ダーク・グリーン、下面と機番は”もちろん”赤。モットリングは、写真の明度から判断して、ほとんどが82ライト・グリーンで、部分的に83が使われている。
 上面の塗装パターンは、ハセガワのインストも、モットルのパターンを含め実機写真のイメージをよく再現している。ただし左翼に関しては、ハセガワとイーグル・カルスで大きく異なる。上記の実機写真ではハセガワのように見えるが、実はこれは写真の汚れで、イーグル・カルスが正しいようだ。
 右翼は写真ではイーグル・カルスのように見えるが、汚れ退色の結果かも。水平尾翼は、明度から82グリーン単色で、左右とも付け根部分のみ83。
 なお、ハセガワの塗装図は、赤の3も同じ迷彩パターンであるが、これは赤の1のコピーに過ぎないので注意。イーグル・カルスには別のパターンが示されている。

細部

 細部の塗色と色調に関しては、モノグラム・クローズアップ・シリーズTa152にある、JG301のTa152のカラー写真が参考になる。捕獲後に一部オーバーペイントされているが、オリジナルの塗色が十分見て取れ、当時のフォッケ系の雰囲気を知る貴重な資料である。
 この写真では、スピナーが黒に白渦巻き。ブレードは70ブラック・グリーンと見えるが、このあたりは微妙で、両方とも同色かも。いずれにせよ、これをドーラにもそのまま当てはめる。スピナー前半は、明度からは黄色が妥当。デカールの解説などに白渦巻きが透けて見えるとあるが、写真ではよく分からない。後半は白線を黒で塗りつぶしたように見える。その明度差からして、当初の黒/70グリーンは随分と退色している。


モノグラム・クローズアップ・シリーズTa152と、同シリーズFw190Dの「黒の12番」。

 

色調

 色調は不明な要素が大きい。前述のTa152と、同シリーズFw190Dの「黒の12番」のカラー写真をイメージのよすがとするが、敗戦間際の混乱した状況で、これらと赤の1番が同じペンキかどうかは浅学にて無知。他資料によれば、黒の12番とは製造工場が違う。1枚のカラー写真が、どこまで対象物の色調を正確に表せるかも疑問。
 かといって他に明確な資料は手持ちになく、何より、自分にとっての末期フォッケのイメージが、この2枚の写真によって形作られている訳で、私的にはこれに頼るしか無いのである。

 言い訳はこれくらいにして、その色調だが、ライト・グリーンはMrカラーのような黄色味は感じられず、明度もそれほど高くない。ダーク・グリーンはほとんどブラック・グリーンのようだ。ただし写真で茶色味を感じる部分もあって、これがダーク・グリーンの色調なのか、そこは81ブラウン・バイオレットなのか不知。ここでは茶色味のないものと解釈。
 ライト・ブルーは、他にメッサーなどを見ても相当白い。Ta152には赤黄の帯があり、その色はMrカラーのRLM23レッド、同04イエローがよく再現している。ただし、赤は実機写真で黒に間違うほどなので、モデルでは暗く鈍い色とする。ま、これもフィルムやフィルタのいたずらかも知れないが。  

その他 

 赤1番には、胴体下面のループアンテナが基部から装着されていない。主翼上面のウォーク・ラインの存在は、写真では確認できない。他機の例もしかり。ただし不鮮明な写真ゆえ、実際には記入されてる可能性も否定できない。モデルでは、重要なアクセントとして記入する。
 イーグル・カルスではヘッドレスト後方上部が銀とされているが、これは光の関係でそう見えるだけで、通常のブラック・グレー。

 

<塗装> 

調色

 82ライト・グリーンは三菱系濃緑色をベースに、明度、彩度を調整。83ダーク・グリーンは自作中島系緑黒色(隼など参照)をベースに調色。結果的に70ブラック・グリーンを若干明るくした感じ。82、83は他色も混ぜ微調整するが、詳細は失念。76ライト・ブルーは白を3割ほど加える。
 23レッドは、サンダーバーズ・カラーとRLM23レッドを半々に、ニュートラル・グレーを加える。ここまではいつも日の丸に塗っている赤と同じだが、前述のとおり暗めにするため、若干の黒を加える。04イエローはビン生。70グリーンはニュートラル・グレーを混ぜ、明るくする。

全体塗装

 下地塗装は、いつものとおりの手順。リベットが埋まらないように、極力薄く吹く。下面の白を吹き、白線部をマスク。このとき黒十字も合わせてマスクしておくと、ここに色境の段差が出来ない。実機の白線は間隔が不揃いだが、模型で再現すると、素人目にはただの下手くそな作品にしか見えない。ここは嘘でもある程度揃える。

 76→赤→82→83と吹いていく。境界はフリーハンド。モットリングをフリーハンドにする以上、他の境界がくっきりしているのは、違和感がある。

モットリング

 コツその1は、迷彩色に地色を半分混ぜて吹くこと。これが意外といい感じに仕上がる。部分的に生の迷彩色を吹く。同様に83も吹き、最後に飛び散りを76で消して終わり。
 コツその2は、いい道具。0.2mm口径のハンドピースを使用。ノズルはぎりぎりに絞る。  


82と76を半々に混ぜた色で吹いたところ。希釈はより薄く、ノズルをぎりぎりに絞る。ワークの「しずか御免」を使用しているが、エア圧はそのままでOK。リターダーを加えると、かえって王冠状の吹きムラが出来やすくなる。

細く吹き出しっぱなしの状態のまま、ノズルを塗装面に向けては描いていく。ナナニイの場合、”瞬間芸”が要求されるが、サンニイでは余裕だ。それにしても、いまいち実物と似ていない。センスの無さを痛感。

 

マーキング

 当初は、簡単にイーグル・カルスのデカールで済ますつもりだったが、@下面の赤の色調とデカールが異なる、Aマークの大きさが微妙に違う、Bせっかくのリベットを活かすため、手描きとする。
 胴体の十字、部隊マークは少し大きくする。写真から十字のサイズを割り出すと20〜1mm。キットの胴体ハッチのモールドの位置、形状が、微妙に実機と異なるので注意。尾翼の鍵十字は少し小さく一辺15.5mm。


イーグル・カルスは左右の「1」の書体の違いまでフォロー。しかしマーク類は微妙にサイズが違う。
ハセガワのデカールをガイドにテープを切り出す。

写真を見ながら、このように位置決め。背景はエクスパルテンの小冊子。著作権法ぎりぎりの表現?
吹き終わったモットルを、上の写真と比較されたい。

白を吹いた後、白部分をマスク。十字の白の幅は2.5mm、黒は5.0mm。

下面の黒十字は、このようにあらかじめマスクしておくと、縞の段差ができない。大した手間ではない。

尾翼のマークは、一辺15.5mm。位置決め後、幅3mmのテープで十字にガイドを貼る。

ガイドに従い、テープを貼る。ガイドをはがせば出来上がり。

ウォーク・ラインは、デカールをうまく貼る自信がなく、ついでだから塗装する。マスクの手間は多少かかるが、○リベットを全面に打つのと比べれば・・

出来上がり状態。多少の乱れはやむなし。

主翼上面。中央の十字から貼っていく。

スピナーにはうっすらと下地の渦巻き。

 

デカール

 イーグル・カルスを使う。キットのデカールと同じマーキングで、なぜ別売りかというと、キットのはフィルムの厚みが我慢できないため。なにしろ、ラダーのリブテープが再現できるぐらいだから(タイフーン参照)。ぼってりクリアを厚吹きして研ぎ出すなら別だが、それでは作品の「キレ」が無くなってしまう。また、白などの発色も不満。

 前述のとおり、国籍マーク、部隊マークのサイズは、若干の誤差があるので手描き。結局使うのは、胴体のスローガンと市松の黒、細部データのみ。部隊マークは「赤の4番」用がジャスト・サイズ。
 リベットを活かすため、デカール後のクリア吹きは極力薄くする。従って余白は徹底的にカット。スローガンは単語ごとに切り離す。デカールの貼り方は、コルセア1a同5Nなどを参照されたい。

ウェザリング

 いつものとおりの面相筆とパステル、ガンダムカラーだが、末期のドイツ機の特徴である排気汚れはエアブラシも併用。本機の場合、汚れと迷彩塗装の区別がつかない程。ここは黒でなくブラック・グレーを使うのが品良く仕上げるコツ。
 同じく末期ドイツ機の特徴は「かすれ」。部分的にペーパーを当て、76ブルーの地を出す。ペーパーが上手く使えない所は、代わりに面相筆で描き込む。

 最後に銀はがしを少々。フィレット部は写真を見ながら似せようとするが、どうも上手くいかず残念。ある段階から、やればやるほど悪くなっていくので、ここらが潮時と手を止める。


ウェザリングの前に、モットリングを実機に似せるべく、最後のあがき。マーキングをマスクして吹き直す。切り出したテープを残しておくと、こういう時便利。

悪あがきの結果。まだまだ精進が必要・・・

ブラック・グレーを吹いた上に、部分的にパステルの黒を擦り込み、メリハリを付ける。

細部データは写真で確認できるもののみ貼り、地色を軽くオーバー・スプレーしてトーンを抑える。

 

 さて、以下は私がウェザリングの際に気を付けるポイント。
  1. メリハリを付ける。今回は胴体中央に徹底的に手を加え、尾翼や主翼端はきれいなまま。また、パネル・ラインを暗くぼかすのも、全部を均一にはやらない。

  2. 部分的に暗色で締める。退色表現でも、明るい色だけでは、ぼやけて締まりのないモデルになる。

  3. 相乗作用が効果的。例えば、ベースとしてパネル・ライン沿いを暗くぼかし、ハイライトでパネルエッジを明色で強調する。あるいは排気汚れでは、ベースにブラック・グレーを吹き、その上からパステルで味付け。


 

<完成と思いきや・・>

 撮影した画像を見て初めて気付く・・キットの上反角は不足!!!。以前にこのページで正しいと書いたが、画像と実機写真を見比べると、やはり足りない。ずっと間違いに気付かないまま完成してしまい、何ともお恥ずかしいかぎり。また、このページを信じて製作された方には、大変申し訳ない。

 作品の根幹に関わる間違いなので、気付いた以上直さないと気が済まないが・・・。う〜ん、どうしよう???  

完成後の切開手術

 モデルを前に眉間に皺寄せ思案する。翼をつかんで曲げようにも接着が強固でビクともしない。モデルを切り刻む外科手術が必要。工法は、

 @案:翼上面フィレット部を切って間を詰める、
 A案:翼全体に渡り上下パーツを切り離し、ずらすように再接着、
 B案:翼下面のどこかを切って間を広げる、

の3案。@は分割線が複雑なのと機銃パネルが汚くなりそうで却下。切断後の曲げが困難。Aは後縁の接着が汚くなりそうで却下。ということでB案でいく。

 ちょうど燃料タンクのパネルラインがあるので、ここで切れば傷跡も目立たないだろう。と、エッチング・ノコでゴリゴリ。さあ、もう後には引けない。この大手術、成功するや否や。


パネルラインに沿って切り離し、間にプラバンを詰める。脚収容部前方はフィレットのラインで切るとよい。

整形、スジ彫り、リベット再生し、塗装準備ができたところ。

 

その結果

 この方法でなんとか修正は可能である。上反角不足のままで完成された方はチャレンジしては如何だろうか。ただし、モデルでは作業の丁寧さが足りず、一部汚い出来になった所があって残念。
 もっと完璧な修復をするなら、同箇所で翼を切り離し、下面の合わせを優先して再接着、上面側を再度整形するとよい。中の桁に補強のプラ板を貼れば、強度も確保できる。
 なお、その際の留意点は、
  1.  ノコは引きながら切るのがコツ。押す時に力を入れるとノコが曲がる。
  2.  モデル内部に削りカスが溜まってしまう。キャノピーを閉じている場合リスクがある。モデルでは、あらかじめコクピット周囲をテープで塞いでおいたため、影響なし(キャノピー取り付けの項参照)。一応、機体各部の開口部から掃除機で吸い出す。
  3.  切開部には、どうしても微小な段差が発生する。これは切断位置と折り曲げ点の関係から不可避。ペーパーで目立たぬように削るが、完全な修復は難しい。パネルラインでの切断は、この段差を少しでも誤魔化す効果がある。
  4.  曲げに伴い、翼と胴体の接着部が、前端から1cmぐらいまで割れてしまう。あらかじめノコで切っておいた方がよいかも。
  5.  主桁は全部切り離さず、上部を少し残しておかないと強度が確保できない。逆に、副桁は切り離さないと曲げられないだろう。

 

左翼のパターン

 以前、左翼上面の迷彩パターンについて、イーグル・カルスは間違いでハセガワ・インストが正しいと書いたが、その後「ハセガワ等は写真の汚れをパターンと誤認したもので、イーグル・カルスが正しい」との指摘をYJ氏より頂いた。イーグルエディションから出版の、「Doras of the Galland Circus」掲載の別角度からの実機写真を見せて頂いたが、確かにそのように見える。ここにお詫びと訂正をさせていただく。
 また、キャノピー後部の斑模様を「汚れのようにも見える」と書いたが、この写真では、塗料のはがれである可能性が高い。他にもこの写真は胴体バルカンクロイツの黒と機番の赤の明度差(黒の方が濃い)、胴体前方の汚れ具合など興味深い情報が読みとれる。

 なお、モデルの方はといえば、当初イーグル・カルスのとおり塗装し、マーキングまで済ませたのだが、その後マーキング部分をマスクしてハセガワのパターン(多少アレンジ)にわざわざ吹き直している。その際、白点線は細切りテープで線状にマスクしたが、仕上がりは全く違和感ない。
 そのうち再修正しようと思っているが、とりあえずハセガワパターンで完成。


イーグル・カルスのインストのパターン。

 

<完成と撮影>

完成

 製作開始から5ヶ月。最後の最後に大チョンボ発見で参った。私にとって、まるで悪女に弄ばれたよう。つまり、美しさに魅了され、深入りした所で、地獄に落されたみたいな。そういえばドーラは女性名。また、○リベットは、もう沢山。実際、最後の方はウンザリしてだいぶ手抜き。
 今回は、堅苦しくて疲れるモデリングとなってしまい、反省。それでもデジカメを通して画面で見ると、大きさ故の圧倒的情報量には、自分で作っておきながら驚かされる。この時ばかりは、苦労が報われて満足感に浸る。

 ギャラリー・ページの3枚目は、前述の「黒の12番」とほぼ同じアングルから撮ったもの。手元に写真のある方は見比べていただきたい。小さいのなら世傑にもある。そうして眺めていて気づいたことを、ちらほら。
 まず、改めて見ても、全体のフォルムは素晴らしい。エンジン・カウルやラジエータ・カウルのイメージはとても良い。細部では、胴体機銃カバーのふくらみが微妙に違う。モデルは機銃口付近が盛り上がりすぎ。スピナーが少々丸い。もう少し先が尖った方がよい。主脚カバー下部の形状が少々異なる(前縁の直線部分の傾きに注目)。気化器インテイクの穴が気持ち大きいか?。いずれも、気にする程のものではないし、修正は結構大変。

撮影

 カメラは初心者ゆえ手本にはなりえないが、何かの参考になれば幸い。

 使用デジカメは4メガピクセルのニコン・クールピクス4300。購入理由は4cmまでの接写ができることだが、完成品の情景写真を撮る分には接写機能は不必要。使用しての感想は、解像度や色の再現度などは文句なし。解像度は能力の上限まで使ってない。HP用なら4メガもいらない。
 ただし絞り機能が不十分で被写界深度が浅いのが唯一最大の不満。モデルの頭から尻尾までピントの合った写真が撮れない。高級機ならこの辺はどうなんだろうか。

 光源は300Wの写真用白熱灯。カメラでホワイト・バランスの調整をすると、色に関しては自然光のように撮れる。シャッター・スピードは1/8〜1/4程度になるので三脚は不可欠。

 撮影台は、90×60cmの板にジオラマ用の草のモト(繊維状のものをハサミで2mm位にカット)をスプレー糊で貼りつける。背景は東急ハンズで購入した水色の厚紙に草原と樹木を描いたもの。地面と背景の不連続感を誤魔化すために、奥に小スケールの小道具を並べる。

 なるべく当時の記録写真の雰囲気が出るように、あえてレフ板やサブ光源は使わず、スケール実寸の人物の目の高さから写す。カメラのモニターではピント合わせがうまくできない。そのため、ピント固定でカメラ位置を微妙に前後させながら、複数枚撮影するのが少々面倒。

 

<参考資料>

 モノグラフは@〜G、またIにも実機取材写真がある。HとP以降は塗装とマーキングの参考資料。

@ 世界の傑作機(新版・旧版) 文林堂
A モデルアート臨時増刊No.336「フォッケウルフFw190D & Ta152」 モデルアート
B モデルアート臨時増刊No.577「フォッケウルフFw190D & Ta152モデリングガイド」 モデルアート
C エアロディティール2「フォッケウルフFw190D」 大日本絵画 
D Walk Around Fw190D Walk Around Number 10 Squadron/Signal Publications
E Broken Eagles 1 FW190D Fighter Pictorials
F Experten Decals No.72-1, 72-3 Experten Decals
G Monogram Close-Up 10 FW190D Monogram
H Monogram Close-Up 24 TA152 Monogram
I Scale Aviation Vol.21 2001年9月号 大日本絵画
J 航空ファン別冊「BF109、FW190」 文林堂
K 航空ファン別冊「ドイツ軍用機」 文林堂
L ドイツ軍用機、ドイツ軍用機U エアワールド
M ミリタリーエアクラフト「ドイツ戦闘機」 デルタ出版
N ドイツ軍用機写真集vol.1〜6 デルタ出版
O ホビージャパン別冊「ドイツ軍用機」 ホビージャパン
P ドイツ空軍エース列伝 グリーンアロー出版 
Q モデルアート臨時増刊No.557「エクスパルテン」 モデルアート社
R モデルアート臨時増刊No.308「ドイツ軍用機の塗装とマーキング(昼間戦闘機編)」 モデルアート社
S The official monogram painting guide to german aircraft 1935-1945 Monogram

 

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