中島 キ43 隼 II型 ハセガワ1/72 製作記

2017.10.6初出

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最終更新日



■ II型も開始

 ハセIIにも着手。両者の作り比べも楽しみだ。ハセのキットは、カウルの丸みと防火壁のクビレが好印象。胴体形状のイメージは良く、普通に素組みで何ら問題ないレベル。ちょっと残念なキャノピとペラさえ何とかすれば・・・。マニアックに重箱の隅をつつけば、胴体の断面形はフジミと同様にオニギリ不足。全長が1mmほど長く、その長い後部胴体にバランスするように垂直尾翼が一回り大きい。主翼平面形、翼型は問題なし。バルジとフィレットが大きく、そのせいで胴体が細く見える。水平尾翼はやや厚く取付位置が高い。


■ 製作開始

 整形手術はフジミと基本同じ。カウルを切り離し、胴体にスジを入れて、山折り谷折りでオニギリ断面にする。胴体長さは、垂直尾翼前縁を基準として図面に合わせることとして、主翼を後退させる。そのため、フィレット部分を切り離し、現物合わせで位置を調整。その分、胴体前端をカットする。ついでに主翼取付高さを0.5mm上げる。これでI型で再現不足だった主翼後縁と胴体の取り合いが改善。下がイメージ図。薄赤部をカットする。

 取付位置が上がったので、そのままでは主翼前後が不連続となる。そこで、切断した胴体下側パーツは、腹の部分を下方に曲げる(緑)。翼下面パーツは機体中心線で前後に切り込みをいれ、下側に開くように曲げる(紫、青)。曲げれば切断部は開くから、適宜シムを挟む。結果、主翼中央部は0.5mm上がり、ややメタボなお腹もシェイプアップ。



キットを仮組みしたところ。この角度からのイメージはなかなか良い。

テープを貼って断面形を確認。風防前付近はそれほど悪くないが、カウル後端付近はオムスビ感不足。車輪バルジにも注目。

手術後のI型と手術前のII型を並べて比較。

上:赤色部分をカットし、翼位置を後上方に移動させる。下:下側の辻褄合わせにパーツを曲げる。



■ コクピット

 胴体形状を早く削り出したいので、コクピット内のリブだけ再現して胴体左右を接着。胴体整形と並行でコクピットを工作する。



0.3mmプラバンでリブをテキトー再現。山折り谷折りとフィレット部切断は加工済み。

II型の計器盤はI型とは異なる。0.3mmプラバンでスクラッチ。といっても穴を開けるだけ。本当は計器の数が違うけど。

側壁のディティールは胴体接着後に下から取り付ける。曲げた部分はプラバンで裏打ち。平面形を保持するためにランナーを接着。

コクピット側壁はI型よりさらに手抜き。どうせ見えないし。

この頃の中島機のコクピットは灰緑色。疾風のプロペラ色、すなわち自作ダークスレートグレイ。塗ってみるとナカナカいい感じ。

胴体に接着。やっぱりよく見えない。レバーの再現はポイント高し。細部の配色等はフィクション。


 計器部にはフューチャーを面相筆で置くように垂らす。


■ 主翼 10/17追加

 今年も翔バナイカイ展示会に参加。刺激をたっぷりチャージする。関係各位に感謝。表画像でもお分かりのとおり、展示会に間に合わせようと、ここ2週間程キャノピ×3にかかりっきり。いずれも難関部分はクリアしたので、完成に向かって突進じゃ。では、日付を少し遡って製作記の続き。



上反角を正しく保つためにプラバンの桁を入れる。ねじり下げに注意して(キットは再現されている)、上下パーツを接着。

前回記述の胴体下面ラインを修正するため、前後に切り込みを入れ(赤矢)、下方(画面だと手前方向)に開く。

十の字。翼型に注意して表面を削る。このあとさらに翼端の厚みを削って尖らせる(画像は作業前の状態)。

胴体下面のラインを確認。カウル下面からの流れが重要。



■ スジボリ

 H-81と同様、ケガキ針で下彫りして、仕上げはラインチゼル0.1mm。小丸パネルなどの仕上げはケガキ針。針先に左親指を当てながら彫るとフリーハンドでも脱線しづらいよ。動翼境は切り出し刀を立てて三角断面に彫る。



並行してスジボリも進める。画像では分かりづらいが、一連の作業の結果、フラップ付近の機体中心線上は、少し盛り上がる。

キットのフィレットを小さくする。赤矢がキットの分割ライン。青矢の位置にスジボリして、その外側は主翼とツライチに削る。

カウルがズレないように、ガイドをつける。穴は泥縄でバルジの裏打ちのため。カウル後端のオニギリ断面に注意されたし。

車輪部のバルジを整形。左画像のとおり裏打ちが露出する。機銃口は穴をあけてランナーを差し込む。



■ キャノピ

 隼I、鷹H81のキャノピと同時進行で。



I型同様、ケミウッドを削る。図面プリントアウトを型紙にする。これ重要。

何度か木型を修正して、0.4mm板を絞って整形。こちらは天井の丸みのせいか内部のクラックは発生しない。

いろんな角度から眺めてチェック。まあこんなもんかな。

水平尾翼も取り付けて士の字。


 尾部補足。垂直尾翼は上端と後縁を1mmほど削って小さくする。これに伴いヒンジラインも前に移動。水平尾翼は取り付けホゾを削って1mm弱下げる。フィレットの段差は瞬間+プラ粉で。エレベータ後端を図面に合せて1mmほど削る。

 キャノピ補足。スライドフード頂部センターにあるフレームのスジボリ、これまでこういう場所のダブル線に苦労してたんだけど、いい方法を思いつく。クリアパーツを木型に被せて90゚横に倒して固定し、センターに高さを合わせたダブル針でけがく。タイヤの縦溝やスピナのスジボリと同じ原理だね。気付いてみれば単純で、もっと早く気づけっちゅうねん。




■ お絵かき

 続いてII前期型。中期型も並べよう。解説はI型製作記のページで。





■ 細部 12/31追加

 大晦日、今年最後の更新は、I型と同時進行のII型。同じくキャノピが不満でやり直す。こちらはそもそも木型がダメで、よ〜く見ると左右対称でないのだ。I型の勢いで、正面撃破じゃ。



こちら従前のパーツ。折角コンパウンドで磨いたのに。この角度からだとイイ感じなんだけどねえ・・

こちら修正版。この角度だと、自分でも違いが分からない。ま、模型というのは自己満足な趣味であるからして・・

オイルクーラー取り付け。キットパーツをベースにサイズ形状を修正する。

排気管も取り付け。スピナはルータ切削。もうあと0.5回りほど削り込む予定。III型はこんな感じに見える写真がある。


 予定マーキングは、当頁読者諸兄には御推察のとおり↑。あ、スピナどうしようかな。


■ 眼の話

 以前に乱視でラウンデルが寄り目になるという話をした。どうも最近、それに加えて垂直・直角が怪しくなってきた悪寒。直角に見えるのに、90゚回転すると直角に見えないのはナゼ? 直角と左右対称が狂うのは、きっと眼のせいだ。うん、そういうことにしておこう。


■ 続、細部 3/09追加

 I型が完成間近となり、2ヶ月ぶりにII型を進める。



従前はカウルフラップ後端で接着していたものを、支持架を介する方式に変更し、カウルフラップ後端を薄くする。

防火壁のスリットにプラバンの仕切りを接着。その2mm前方にある瞬間を埋めた痕が、キット本来の防火壁モールド。

スピナは、ハセ疾風のパーツに軸をつけてルータ切削する。ペラはタミヤ零戦を使う予定。

タブをプラバンで追加し、動翼にインレタを貼る。こちらも例の赤いやつ。

脚柱はキットパーツ。シャフト部は瞬間を盛り均一な太さにしてから、カッティングシート細切りを貼る。その他はI型同様の工作。

車輪はキットパーツ。直径が小さく角ばってるので、トレッド面に瞬間を盛りルータ切削。軸はつまようじを瞬間で仮固定。

スライドフードを仮固定した状態で、風防を溶剤系にて接着し、隙間にタミヤパテ。

パテを整形し、スジボリ、ファスナ(#3たまぐり)を彫刻する。


 脚柱のカッティングシートは、粘着剤だけでは固着せず、最終的に瞬間で接着。そのため、アップで見ると、ガタガタ。ヘタレや。I型同様にタミヤ零戦を奢ればよかったか。ま、まだ間に合うし後で考えよう。

 その他、スジボリの追加、修正、表面の不具合の修正などちまちま工作し、塗装直前の状態まで。


■ 塗装 3/20追加

 続いて塗装。暗緑色斑点迷彩だ。予告どおり、25戦隊の機番20にする。当機の左側面写真が旧版世傑にある。他の斑迷彩機と比べ、斑点が小さいのが本機の特徴で、これをいかに表現するかが本作品のキモとなる。

 日の丸のサイズはI型と異なる。胴体は当機の写真より、赤が70cm、白が85cmとする。主翼は、明確に分かる写真がなく、それらを総合的に判断して140cm、記入位置は翼端から140cm離すものとする。かなり大きく、中心寄り。味方識別帯は丁度胴体中心と翼端との中間位置まで。尾翼の帯は幅27cm程度。

 迷彩と日の丸の使用色はI型と同じ。黄橙色はガイアの同色に微量の赤。プロペラの赤褐色はC131赤褐色とC335ミディアムシーグレイを半々程度。



C8銀とフラットクリア半々をエアブラシ。このあと羽布部にプリビアスシルバー+白少量+フラットクリア(下面も同様)。

プリビアスシルバー+フラットベースをドライブラシ気味に被せてヘアラインを表現。パネルライン毎にトーンの違いも表現。

次に暗緑斑点。本番前に練習。暗緑エアブラシの後に、筆で銀と暗緑を塗り重ねる。最後にフラットクリアを上掛け。精度は粗いが、これはこれでアリ??

では本番。0.2mmエアブラシのノズルを極限まで絞り、出しっぱなし状態にして、ランダムに手を動かしながら斑点を描いていく。しかし、出来上がると、実機写真の雰囲気と離れている。

斑の緑が薄く、一方で銀地にも薄く緑が被っている状態なのだ。そこで銀地には銀を吹き、暗緑は筆で上塗りしてみるが、あまり改善しない。ということで、このやり方は却下。仕切り直し。

再度、全体に銀を吹き、面相筆で暗緑斑を描いていく。まず、銀と暗緑を半々にして、写真を見ながら薄くアタリをつけていく。これは境界のぼかし表現も兼ねる(つもり)。

次に暗緑を薄く溶いてその上に少しずつ塗り重ねていく。一度に塗るのではなく、刷毛目の方向も縦横変えながら、何回も重ねていく。結果的に、周囲が程よくぼやけた状態になる。

右舷と翼面は写真がないので、左舷胴体の雰囲気で塗っていく。写真の羽布部は、塗料が剥がれ難いのか暗緑が濃く残っている。これも面相筆で塗装。

マーキングのためのマスキング。各色一度にマスクする。インレタの上には極力紙を使う。

白、黄橙、赤、黒の順に吹いていく。アンチグレアなど一部に銀はがし。最後にフラットクリアを全体に吹く。


 補足。エアブラシでの斑点は(結局、不採用だけど)、一瞬でも一箇所に留まると王冠状になるので、常に動かす。近づけて点を描き、すぐに離す感じ。仕切り直しの銀は、明度を上げるためプリビアスシルバー+フラットクリアにする。パネル毎の変化は無意味なことが分かったので止める。羽布部は、最後にラプロスで軽く研磨してリブを銀色に目立たせる。塗り上がると、同じ色なのにI型のベタ塗りより緑も赤も明るく感じる。その分を見込んで少し暗めに調合すべきであったか。まあ、後から塗り重ねるのも可能ではある。


■ 春

 前回の引っ越しから、もう二年。再び引越し@単身の「予感」。自宅から通えなくもないが諸事情で。模型道具は単身先に持っていく予定。資料本などは置いていく。しばらく作業停滞だけど、ページ更新ネタのストックがあるので、それで繋ごう。


■ 細部 5/1追加

 GW突入。絶好の行楽日和。しかし毎年この時期は、部屋に籠ってモケイなのじゃ。II型も静岡に間に合わせるべく、突貫作業。



以前に自作した脚柱上部の出来が気に入らず、タミヤ零戦をもう一箱買ってきて上部のみ交換。中心には真鍮線を通す。

脚カバーは拙図に合わせて切り出したもの。キットの脚庫の形は全然ちがう・・・。まあ、誰も気づかないだろうけど。

脚庫は青竹と考えられる。脚カバー内側は無塗装、コクピットは灰緑色で、このアレンジは鍾馗II型と全く同じだ。

塗装して脚カバーを接着。使用色は機体塗装と同じ。脚柱上部もスッキリ。

一緒に塗装しておいた脚カバー上部の小片も取り付ける。脚庫のマスキングはセロテープ。貼ってからデザインナイフでカット。

シートはIと同じくプラバン細工。ベルトはファインモールド。

シートをコクピットに接着。シートが銀色かどうかは確証なし。どなたかご存知?

スピナの後半(というのか?)を工作。プラバンを丸く切り抜き、プロペラハブにディテール。詳細不明で雰囲気再現。

引越しで片づけてたら、大昔買ったエッチングを発見。忘れてたよ。でも考証はかなり怪しいな。プラグコードのみ使用。

アンテナ柱はバイスにくわえて削る。基部の細い部分を角棒ヤスリで削ってから切断する。

機体に取り付ける。プラグコードも取り付ける。

ピトー管は0.6mm洋白線の先を削ったもの。エルロンヒンジのカバーは延ばしランナーを斜めに切る。


 補足。ヒンジカバーのような極小パーツを正しい位置に接着する方法を発見。少量の水を接着剤がわりにして仮固定し(要は「ぺろっ」と舐めて貼るわけ)、そこに流し込み系をツッと差す。

 インレタの機番を貼ろうとして大チョンボに気づく。1/48で描いたイラストの描画オブジェクト、縮小せずそのまま版下にしとるやんけ〜!この、ボォケ〜! 取り急ぎ、訂正した版下を作成し、アドマに緊急発注。余白が勿体ないから、ついでに裏で進行中のやつなども仕込んで、一日作業やがな。


■ 静岡HS 5/15追加

 今年も「お祭り」に参加する。昨年と違い、今年はフル参戦で充実の2日間である。UAMCは、飛行機一色ならではの良さがあるけど、全ジャンルの静岡HSはまた違った面白さがある。最近はジオラマ(とくに非AFV系)、フィギュア、船など、他ジャンルの作品から刺激を受けることが多い。また、1/144隼を開発中のSWEET杉田社長とお話しできたのは嬉しかった。私が知らなかった事実も教えていただく(後述)。私の図面が少しでも役に立てばいいのだけど。

 それにしても、飛行機クラブのゾーンは、来場者の人口密度が低く、出品者の平均年齢が高いなあ。偏屈じじいのたまり場は、若いモデラーにとって敷居が高いのだろう。ま、メーカーと違い、こちらは趣味でやってる世界ゆえ、無理してまで若年層を取り込む必要はないと思うが、それでも飛行機ビギナーを温かく歓迎する姿勢は必要だろうね。私が言うのもなんだけど、ビギナーに「ここが違うあれが違う」は止めたいな。考証は飛行機モデルの中のごく狭いジャンルで、考証にとらわれない作品もアリだと、読者諸兄もご認識いただければ幸い。(私はそういうスタンスなんだけど、どうも勘違いされてるようで・・)


■ 隼図面修正

 右舷後方胴体にある尾脚オレオの点検パネルの存在を教えていただき、側面図に追加して差し替える(感謝)。


■ 完成

 静岡は滑り込みで完成。というのも、GW中は郵便配達お休みでインレタが届かないのだ。以下完成まであれこれ。



照準器は1.0mmプラバンの上に0.2mm透明プラバンを接着。遮光ガラスを暗く塗りすぎ。

機体に取り付けるとあまり見えない。コクピット内部も全然見えない。アンテナ線も取り付け。

I型と同じ素材でブレーキラインを追加。

ようやく届いたインレタを貼る。フラットクリアを吹いてウォッシング。


 補足。インレタ備忘メモ。今回発注の白は、従前とインクの材質が異なるとのこと。聞けば、卸していた会社が倒産し、今後在庫切れの色より順次変わっていくとかで、新インクは上掛けのクリアを弾きやすいらしい。今回特別に開発中の弾きにくいインクで作ってもらう。使用感は従来の白と変わらない。なお、リブテープの赤インレタがクリアで滲む件は、色によりインクの特性が違うためらしい。


■ LS 1/75 II型

 最後に、恐竜時代?のLSキットを見ていただく。今の目で外形云々を言うこと自体ナンセンスだが、胴体形状がカウリングからズドンと真っ直ぐ。これ、実機と全然違うんだけど、この形が刷り込まれた人は多いのではないかな。後に開発されたキットの多くがよく似た胴体になっているのは、LSが元凶ではないかな? そういう意味では罪深いキットなのだ。なお、胴体長は1/75だが、主翼幅は1/72。そのせいで、寸詰まりに見える。


キットは素組み。静岡版はこのあと翼日の丸と部隊マークを修正。


■ 完成画像 8/3 追加

 続いてII型完成画像。面相筆塗りの斑点迷彩は、老眼の眼で見るとイイ感じなんだけど、写真では筆目が分かってしまうな。もっと丁寧にボカシを入れるべきか。また、下地の銀はもう少し白っぽくしたかったところ。とはいえ、白を入れればいいってもんでもないし。主脚フォークの裏側に貼った真鍮線は、案外目立たなくて一安心。

 ともあれ、スマートで洗練されたII型の姿、これはこれで、カッコイイなあ。「しゅっ」と絞った防火壁付近の胴体断面形を感じてもらえると嬉しい。フジミもそうだが、ハセの隼はちょっと手を入れると見違えるように良くなる。最大のネックはキャノピ。木型はお貸しできるのでご希望の方はどうぞ。
























 さて当頁における日本陸軍戦闘機、1、2、4、5が出来たので残るは3だ。いいキットも出たけど・・・まずは、海怒と幽霊を片付けるのが先か。




■ 参考文献

 参考文献リストは図面のページに。






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