F−104C(ハセガワ1/48)製作記

2008.3.3 初出


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フューチャー情報追加



 はじめに 




■ 意外な選択?!

 1/32サンダーボルトのお披露目はまだ先だが、そろそろ次に取りかかる。マルヨンというのは意外な選択に思えるかも知れないが、かなり前から候補機リストの上位にあって、キットやパーツを準備していたところ。大方のウケを狙うなら空自の日の丸だろうが、無塗装銀にしたいとなると、迷うことなく米軍C型となる。

 なお、当面前作同様サワリだけの紹介とさせていただく。またも欲求不満の製作記となるが、ご容赦願いたい。


■ 未来の輝き

 今回のテーマは、ずばり「未来」。つっても何のことかサッパリ分からないと思うが、これ欧米中心に一部のマニアが強く支持するフューチャー(Future)ワックスのこと。この米ジョンソン社製家庭用床ワックスは日本国内では流通してなく(同メーカーの類似品はある)、知人が米国から取り寄せたものを小分けしていただいた。感謝。

 これは水溶性の透明樹脂ワックスで、乾くと透明で強固な膜が形成される。透明度の低い塩ビ製クリアパーツを浸けるとか、仕上げのクリアがわりに使うのが一般的。その銀塗装への応用を研究中なわけ。ただ、まだ上手くいく自信はなく、もしダメならハイブリ+スクラッチに逃げるかも。



これがジョンソン・フューチャー


 なお、フューチャーの使用法については、こちらこちらに詳しい。←英語だけど。去病氏の掲示板でも話題となっているので(2008年3月時点)興味ある方は参照願う。日本におけるフューチャーの入手方法については、こちらで通販できる(左の一覧にある「住居用洗剤」の2ページ目にあり)。また、ガネットさんで小分け通販しているという情報(2008年5月現在)あり。


■ 製作コンセプト

 いつもは形状マニア炸裂だが、前作でお疲れ気味。屋上に本物を載せてるメーカーの作だから、外形は完璧なハズ。そう信じて、塗装を楽しむ。ただしリベットは銀塗装の一部という認識だから、これは必然か。細部は最近買ったアイリスのレジンパーツにお任せ。うーん、いわゆるモケイ誌的王道モデリングってやつ?

 マーキングはイーグルストライクデカールを使用の予定。ただしこれにはコーションデータ類が含まれてなく(AMD系っていつもそうだ。何とかならんもんか。)捜索中。数件の模型店を当たったがデータ入りのシルク印刷デカールがまだ入手できず。ピンチ。



アイリス製レジンパーツ。しめて3,622円ナリ。キットより高価。

その中身。脚収容部はいらないんだけど、揃って売ってるとつい買ってしまう。




 組み立て 




■ レジンパーツの仕込み

 レジンパーツは、ディティール、精度(合わせ)とも素晴らしい出来具合。もちろん、入念な削り合わせが肝要なのは言うまでもない。まず大きな湯口をカット。ノコギリ、ヤスリより、ニッパーと彫刻刀が早いし、有害な粉が出ない。ザクザクと切っていく。力を入れると割れそうな部分はモーターツールの回転ノコ。あと0.5mmまで迫ったら、#120サンペの出番。両面テープで定規に貼り、水をつけて削る。

 途中省略して、一気に・・・



胴体左右接着。まずは「一」の字(明朝体)。



■ フューチャー情報(BBS過去ログ) 3/12追加

 前回アップで去病氏の掲示板のことに触れたが、そこでの議論を過去ログにまとめ、ご紹介する。よく読めば有益な情報満載だ。最後にけんと千春の髪隠し氏にご教示いただいた国内入手方法も紹介しているので、欲しい方はお見逃しなく。情報提供諸氏に改めて感謝。

未来の過去ログ 3/14追加

 また、近日中に先に紹介した海外サイトの抄訳を掲載するつもり。


■ 進捗状況

 更新が過去ログだけでは寂しいので、進み具合の報告。ただ今、リベット真っ最中。リベット入り図面が入手出来ず。仕方なく文献-8、9やWEB写真からリベットラインを判読・解析。ほぼ9割方のラインは判明。キットのミスを発見したりして(大したもんじゃないけど)。



赤が正しいパネルライン。黄色はキット。右舷側も同様。



■ 胴体リベット 3/24追加

 相変わらず年度末(?)で忙しいのだが、休日などに少しずつ手を動かし、胴体リベットが概ね終了。あとは尾翼2つ(??)だから、もう少しってか。



ただ今の進捗状況。



■ 春休み読書感想文

 模型ネタがないので、雑記なぞ。

 フレデリック・フォーサイス著「シェパード」(角川文庫、篠原慎訳)読了。これ、モスキートPR.XVI製作時にモスキートが出てくる小説ということで紹介いただき、読みたかったもの。近くの図書館に無くてそれっきりだったんだけど、最近取り寄せ注文するのを覚えて(←早く気付けよ)、ようやく念願叶ったわけ。

 タイトルのシェパードというのは、空軍用語で救援機のこと。ストーリーの方は、ヴァンパイア・ジェット戦闘機にて西ドイツから英国に飛ぶ若いRAF士官が主人公。モスキートがどうかかわるかは、読んでからのお楽しみ。

 この外にも、この頃フォーサイスにはまっていて、「シェパード」を面白いと思った方には、短編集「囮たちの掟」(角川文庫、篠原慎訳)に収録されている「時をこえる風」もおすすめしたい。これはアメリカ西部における第七騎兵隊とインディアンの戦いを題材としたもの。

 で、思うんだけど、こういう小説を面白いと感じるのは歳のせいかなあ。涙腺が弱くなるのも同じ。今日は息子の卒業式に出たんだけど、不覚にも目頭が熱くなったりして。そのうち、模型見ただけで泣けるようになるかも。←危ないぞ。


■ フューチャーインフォメーション 3/26追加

 3/12予告の、海外サイト抄訳を追加。(1)は詳細な記述、(2)の失敗情報も有益。

未来のBBS過去ログ(再掲)

海外サイト抄訳(1)

海外サイト抄訳(2)


■ フューチャー試験レポート 4/16追加

 実際に自分で試してみたので、その結果をお知らせしたい。

 お試しする前に、お買い物。まずエアブラシ。別段フューチャー専用を買うつもりはないのだが、以前からサブとして口径の大きいブラシを欲しかったので、これを機会に口径0.4mmシングルアクションを購入。フューチャーの希釈用に無水エタノール、洗浄用にアンモニア水を薬局で購入。アンモニア水は昔懐かし虫さされ薬の臭い。



Mr.ホビーPS-268をジョーシンで購入。今回、これでフューチャーを吹く。

無水エタノールとアンモニア水。


 では、いよいよ不要パーツを使ってテスト。クレオス・スーパーメタリック・シリーズの#SM06クロームシルバー、#SM07メッキシルバーを吹いた上に、フューチャーを原液のまま希釈せず吹く。海外文献では空気圧にも言及されているが、圧力調節バルブは持ってないので愛機「静か御免」に直結して吹くだけだ。ブラシを離して吹くと梨肌状(海外文献の「オレンジ・ピール」か?)となるが、吹き重ねることにより表面は平滑になる。ただし油断すると隅部などに液が溜まってくる。

 無水エタノールで希釈した場合の作業性もテストする。結果は、多少平滑性が増し梨肌が少なくなる気がするかな。食器用洗剤を2割程添加した場合も同様。(これについては、後日追記)

 海外文献でも言及していない注意点。銀塗装+フューチャー処理の上からラッカー系塗装をすると、フューチャーが侵されて、細かいヒビが入る。これはフューチャーの乾燥時間が短かったことが原因かも。なお、塗装の厚塗りである程度ヒビを抑え込むことは可能。

 もう1つ注意点。フューチャーは、一部のデカール軟化剤に弱い。クレオスのマークセッター、マイクロのゾル(赤い方)は、フューチャー表面を侵し、表面が曇ったようになる。マイクロのセット(青い方)は大丈夫。他の軟化剤は持ってなく試してない。

 タミヤ・ウェザリング・マスターによるウォッシング&スミ入れは、完全に拭き取れないので×。パステル粉+石鹸水が無難。エナメル系は試してないので不明。

 用具の掃除は、塗装直後なら水で十分。エタノールもフューチャーを溶かすようで、これも洗浄剤に使える。アンモニアはやはり臭いが・・・



スーパーメタリック・シリーズのクロームシルバーの上にフューチャー処理したもの。

メッキシルバーの上にフューチャー。


 結論として、銀塗装にフューチャーは「かなり使える」。オリジナルの銀塗装の輝きを低下させることなくコート可能。我が国でも銀塗装にフューチャー処理が一般的になる日は近いと思うよ。


■ 進捗状況

 ようやくここまで。本番塗装の直前。静岡まであと1ヶ月。



主翼を接着。

キャノピも接着。



■ 塗装開始 5/11追加

 この時期、静岡合同展を目指して皆さん追い込みの真っ最中。HPやブログからも気合いが伝わってくるね。こちらは、暫くぶりの更新で申し訳なし。

 さて、塗装手順としては主翼やレドームなど、銀以外の部分を先に塗装し、マスクしてから銀塗装、マスクを全部はがしてフューチャーとなる。



白、エアクラフト・グレイには、クレオスの新塗料「GX」を使用。隠蔽力、塗膜が強く、おすすめ。

主翼の塗り分けラインは、パーツ分割ラインとは異なることに注意(画像は左舷主翼で左が機首)。


 MA別冊によると、自衛隊機のアンチグレアはFS34079(特色#309:ベト迷の暗い方のグリーン)かFS34092(特色#302:米陸ミディアムグリーン)とされており、作品は特色#309ビン生で塗装。一方、イーグル・ストライク・デカールのインストによると、米軍C型ではアンチグレア・グリーン(FS34108)とされているが、気付いたのは塗装後。
 また、風防前部との塗り分けラインに注意が必要。空自は窓周囲の細縁のみが銀色だが、米空軍ではキットのクリアパーツ部分が全て金属地肌。


■ 銀塗装

 GWの休みを利用して一気に銀塗装だ。メタルカラーをフューチャーでコートする。細かい技法は、いずれそのうち解説したいが、メタルカラーの使い方は本HPのF-86Dと基本的に同じなので、そちらを参照いただければ幸い。



銀塗装とフューチャー処理が終了。

そのクローズアップ。

エンジン周辺はマスキングして塗り分ける。

燃料タンクにはヘアラインを入れる。



■ マーキング

 国籍マークやレター類はイーグル・ストライク・デカール#48029のシートを使用し、ベトナムに展開した479TFW所属機とする。銀地にはレター類のニス部分が目立つので、完全に切り取る。コーションデータ類の一部はプラッツの空自J型用デカールも流用。

 細部の塗装については、給油プローブのパイプがキットの指定塗装機では黒だが、ベトナム派遣機は銀色。ピトー管は赤白塗り分け。



USAFはキットでは黒だが、イーグルストライクはインシグニアブルー。サイズが過小だがそのまま使用。

U.S.AIR FORCEはニスを完全に切り取って1文字ずつ貼っていく。



■ フューチャー追記 5/13追加

 注意点をいくつか。コンパウンドで磨いた後にフューチャーを吹くと、コンパウンドがフューチャーを弾いてムラになる。海外文献に「指紋を付けるな」とあるとおり、フューチャーは塗布面の清浄さに敏感だが、洗剤の添加によって改善される。ということで、フューチャー吹きには、洗剤の添加を推奨する。(←その後、P-36製作中、洗剤添加が原因かどうかは不明だが、曇りが発生。詳しくはP-36製作記を参照のこと)

 フューチャー「後」のコンパウンドは問題ない。というか、吹き過ぎでたれるよりは、梨肌気味に薄吹きして、ざらつきをコンパウンドで落とす方が私好み。ただし、皮膜が柔らかいので磨きすぎに注意

 希釈に無水エタノール(100%アルコール)を使用すること自体は、特に問題の発生は経験していないが、乾燥後のフューチャーにこれがつくと、白く曇る。無水エタノールって、ラッカー塗料も落とすくらいだから、けっこう強い薬品なんだね。吹き付け作業性の改善のための希釈であれば、水で薄めたアルコール、あるいは単に水(+洗剤)というのもありかも。特にメタルカラー+フューチャーの場合、アルコールが輝きに悪影響を与える懸念あり。




 完成 




■ ほぼ完成

 ということで、静岡前に滑り込みでほぼ完成となる。






■ 静岡雑感 5/20追加

 2008年静岡ホビーショーに参加した。蛸壺モデラー生活が長かったせいで、静岡デビューは遅く、今回で5回目。行くたび刺激を受けて帰るのだが、今回はソリッドモデルの超絶作品にもの凄い衝撃を受けた。製作者の方々には、私のくだらない質問に丁寧にお答えいただき、改めてお礼申し上げる。いつか(定年退職後?)大スケールで、サンダーかスピットをフルスクラッチしたい、という夢が目標に変わりつつある今日この頃。



静岡HSオービーズブースにて。台は借り物。(撮影:Blog Modelers ヒロシ氏)




 さて以下で会場で見た中で気になるものを紹介する。


ハセガワ1/32 P-40E 6/4訂正

 今回の目玉である。なんと1/48キットのミスや不具合が、ことごとく改良されていてビックリ。まず、キャノピパーツの分割が変更され、接着剤のはみ出しで窓が汚れる心配がなくなった。後方固定窓だけでなく、風防部まで考慮してくれたのが嬉しい。

 その他、会場でぱっと見ただけでも、エルロンのリブ、プロペラの形、顎上部のくびれ、顎の断面形、ラダー下部の厚み、羽布貼り部のモールド、脚収容部のモールド、主翼前縁のバルジ、機銃の配置、薬莢排出口付近の部品分割、脚小カバーの形状など、拙ページで指摘した箇所の全てが改善されている。ここまでやってくれた設計陣の努力には、頭が下がる。

 さらに1/32ならではの詳細なディティールとして、折りたたみ時に脚を90度ねじるギアまでパーツ化されているし、鬼丸氏原型のフィギュアも素晴らしい(氏は他にハセ1/32Ju87スツーカ、P-47サンダーボルトなどの原型も製作)。もともと1/48キット自体が、マイナーなミスを除けば外形の正確な素性の良いキットであるだけに、今度の1/32は、あらゆるスケールを通じて、まさにP-40の決定版である。どんどん買って、どんどん作ろう!
(以前、フィギュアを竹さん原型と書いたが、私の勘違いで間違い。関係者の方々には大変ご迷惑をお掛けした。お詫びして訂正したい。)


タミヤ1/48 零戦52型

 こちらは、1/32キットのCADデータを使ったというタミヤ説明担当氏のコメント。外形については、会場でぱっと見たかぎり文句なし。リベットは一部パネルライン沿いのみにあり、全面には打たれていない。これもスケール相応で適切(私としては、リベット沿いにも不要だが)。コクピットなど細部は1/32ゆずりで詳細なディティール。これもヨンパチの決定版だ。


■ 次回作?

 ホビーショーでは何人もの方から「次は何を作るの?」と訊かれた。ハセガワに敬意を表して1/32P-40Eと言いたいところだが、大物はちょっとお疲れ気味。ということで、タミヤ1/48零戦52型が発売され次第ソッコー作りするつもり。今年の夏はゼロセン祭りで盛り上がろう。

 ただ、非の打ち所のないキットって、誰が作っても同じになりかねない(1/32キットは多分にその感あり)。外形マニアで人と同じじゃ面白くない天の邪鬼の私としては、独特のネジリ下げをした主翼の徹底再現で差別化しようか。あとはリベットを打つ程度にして、個々の作業をできるだけ丁寧にすることで、全体のクォリティを高めたい、などと妄想中。


■ フューチャー(というか床ワックス)情報追加 5/30追加

 デカール段差消しのお手軽な方法として、リンレイオール床ワックスを綿棒で塗って#1500ペーパー研ぎを何度かくりかえし、コンパウンドで仕上げる、という情報をいただいた。これ、フューチャーでも応用できそう。また、リンレイワックスを金属パーツのプライマーにつかうのも有効とのこと。詳しくはtaki氏のblog(2008/05/29の記事)で。コメント欄も参照されたし。毎度情報提供諸氏に感謝。



taki式デカール研ぎ出し法



■ ワックス情報さらに追加 6/18追加

 内容は↓こちらから。毎度感謝。

  ・
未来のBBS過去ログ(再掲)


■ ワックス情報もひとつ追加 

 拙作1/72カーチスP-36において、フューチャーの失敗事例あり。

P-36製作記その3


■ 通常版製作記 

 通常版製作記はこちら









 参考資料 



■ 参考文献

 マルヨンについては、これまであまり意識して集めてなく、手持ちはそれほど多くない。愛情の程度が分かってしまう?

 MA別冊におおくらとしお氏のイラスト塗装ガイドがあって、細部の色が細かく解説されている。とても重宝だが入手難か。現在入手しやすく有用なのは電撃スケールマガジンの別冊。ハセガワの屋上にある実機を取材しており、写真も鮮明。ベトナム戦争におけるC型の戦歴については、世傑No.103に詳しい。日本語で読めるし。



1 F-104 Starfighter in action Aircraft Number 27 Squadron/Signal Publications
2 D&S VOL.38, F-104 Starfighter Squadron/Signal Publications
3 世界の傑作機 No.103 F-104スターファイター 文林堂
4 世界の傑作機 No.104 ロッキードF-104J/DJ"栄光" 文林堂
5 旧版 世界の傑作機 文林堂
6 航空ファン別冊 No.60 ロッキードF-104スターファイター 文林堂
7 航空ファン別冊 No.21 ベトナム航空戦 文林堂
8 モデルアート別冊 NO.259 F-104 Starfighter モデルアート
9 電撃スケールマガジン別冊 F-104J/DJスターファイター「航空自衛隊」 メディアワークス



■ 参考サイト

 結構な数のサイトがあり、丹念に集めるとかなりの情報が得られるかも。
  1. データ、写真、リンクなど多数
  2. クローズアップ写真
  3. 同上
  4. 同上
  5. 同上
  6. エジェクションシート
  7. ご存じAirliners.net

  8. フューチャー国内通販 (左の一覧にある「住居用洗剤」の2ページ目にあり)
  9. リベットツール(球ぐり)通販
  10. 自作インレタ(マックスラボ)




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